公共施設の緑化工事からマンション・結婚式場などの外構・造園工事、個人宅のガーデン・エクステリア工事まで幅広く手掛けている株式会社広田造園。原爆によって甚大な被害を受けた広島を緑豊かな都市にするべく、地域の発展とともに歩み続け、2019年に創業70周年を迎えた。名勝・縮景園をはじめとする日本庭園の造園・維持管理にも長けた確かな技術力と、公共工事で培った品質管理ノウハウを活かし、着実に成長を続けている。
2020年、同社は個人宅のガーデン・エクステリアを手掛ける「Symphonic Garden-シンフォニック・ガーデン」部門にてANDPADを導入し、現場の「見える化」に取り組んでいる。今回は、協力会社と一体となってANDPADの運用を進める4名にインタビューを実施。前編では、同社の歩みや事業の特徴、協力会社との関係性などについて紹介する。
2012年に中途入社。営業からスタートし、グリーンファーム展示場の店長兼現場管理を経て、現在は、グランピング施設「IHANA!」支配人も兼任。1級造園施工管理技士/2級土木施工管理技士/造園技能士/ブロック診断士 など
INDEX
時代の流れを敏感にとらえ、個人宅のガーデン・エクステリア工事分野へ参入
戦後まもない1949年に創業し、広島に根ざして70年以上にわたり事業を継続してきた同社。創業からしばらくは、国や県、市、NEXCOなどが発注する公園や緑地の造成、街路樹の植栽といった公共緑化事業や、ゴルフ場の設計、施工、管理を中心に手がけ、地域の魅力ある景観づくりを支えてきた。
1999年からは、個人宅のガーデン・エクステリア工事を行う事業をスタートし、安芸高田市に同社初のエクステリア展示場「グリーンファームHAJI」をオープン。まず、この個人顧客向けの新規事業を立ち上げた経緯について伺った。
村上さん: 当社の代表が、時代の流れによって公共工事が減少していくことを見越し、新しい事業の柱を作ろうと考えたことがきっかけです。当時、外構工事まで行う造園会社は少なかったのですが、消費者ニーズの高まりを肌で感じていたため、造園と外構をセットで手掛ける方向へと舵を切りました。
同時に、弊社代表がゼネコンとの取引をストップしたことも、個人顧客向けの事業に向かう転換点になりました。以前は、ゼネコンの所長さんが現場の業務量や難易度を考慮した上で、私たちと調整をしながら発注をしてくださっていました。しかし、ゼネコン内部の分業化が進み、価格重視で下請けを選ぶ傾向が強くなっていったのです。そこで当社の代表は、下請けとしてギリギリの予算で工事を請けることによって会社や社員が疲弊していく流れを変えるために、ゼネコンとの取引をやめるという大きな決断をしました。当時の苦しみがあったからこそ、現在はエンドユーザーとの直接取引、元請け工事にこだわって事業を展開しています。
私が入社した時にも、先輩や上司から「協力会社さんに無理をさせるな。自分たちだけ楽をして協力会社さんを苦しめても何の意味もない」と叩き込まれてきました。今でも社員には、職人さんにしっかりと利益が残る発注を心がけるように徹底しています。
株式会社広田造園 常務取締役 村上拓也氏
職人ファーストの考えが会社の隅々にまで行き渡っている同社。条件面でも、気持ちの面でも仕事をしやすいのだろう、技術力の高い職人が自然と集まっているという。実際、現場で活躍する職人に対するお客様からの評価が高いことも、同社の特徴のひとつだ。お客様アンケートにおいても「職人さんの対応が素晴らしい」との声が並ぶ。
川崎さん: 当社は、お客様に安心していただくために、独自の施工基準を設けて工事に取り組んでいます。個人宅のガーデン・エクステリア工事をスタートして約15年、協力会社さんの出入りはありましたが、当社の思いを理解し、施工基準をしっかりと守ってくれる方たちが残ってくださっています。そのため、お客様だけではなく私たちも安心して仕事を任せることができています。
株式会社広田造園 シンフォニック・ガーデン 広島展示場 店長 川崎将一氏
村上さん: もちろん施工技術だけではありません。そもそも、挨拶と礼儀がなっていない職人さんは当社の現場には入れません。一定レベルの技術はもちろん必要ですが、技術以上に人柄やコミュニケーション能力を重視して仕事をお願いしていますね。
特色の異なる二つの展示場を展開し、多様な顧客ニーズに対応
2016年、同社は新たにガーデン&エクステリアのブランド「Symphonic Garden-シンフォニック・ガーデン」を立ち上げた。1999年にオープンした安芸高田市のグリーンファームHAJIは、約30,000本の生木と多数のエクステリアサンプルを展示する「シンフォニック・ガーデン グリーンファーム展示場」にリニューアル。無料のドッグパークや子どもの遊び場も備えており、多くのお客様が足を運ぶ開放的な展示場となっている。
また、ブランド立ち上げと同時に、同社は広島市西区に「シンフォニック・ガーデン 広島展示場」を新たにオープン。緑豊かな植栽とプライベートプールを備えたリゾート感あふれる展示場で、お客様が考える理想のお庭について丁寧にヒアリングし、提案を行っている。
広島市西区の広田造園本社に併設されたシンフォニック・ガーデン 広島展示場
川崎さん: 広島展示場は、広島県北部にあるグリーンファーム展示場に足を運びにくい市内のお客様のために出店しました。出店後は、広島市内全域に商圏が拡大し、お客様の数も爆発的に増えています。広島市内と県北部に二極化したことで、営業担当者の移動範囲も短縮され、効率的に業務に取り組めるようになりました。
株式会社広田造園 シンフォニック・ガーデン グリーンファーム展示場 店長 杉山尚行氏
杉山さん: グリーンファーム展示場の商圏は、安芸高田市、三次市といった県内の北部エリアから島根県の一部も含んでいます。ただ、無料のドッグパークがあるので、「犬を遊ばせたい」「犬と一緒に商談もしたい」というお客様は、広島市内からもグリーンファーム展示場にご来店されます。市街地から離れていることもあり、広々とした土地を持つお客様からのご依頼にも数多く対応し、敷地を有効活用するノウハウも蓄積してきました。2つの展示場を設けることで、お客様の選択肢を増やすことができたのも受注増加につながっていると思います。
お客様に様々な選択肢を提案できる同社は、創業以来、官公庁発注の造園工事に長く携わってきたからこそ実現できる高い施工品質も強みの一つだ。社会的信用力が高い建設業許可を有する造園工事会社として、「シンフォニック・ガーデン」においても、建築基準法に沿った独自の施工基準と保証基準を50項目以上設けて施工を行っている。また、サイト上には保証の実例も公開し、お客様の安心感を高めている。
村上さん: 施工基準が厳しい公共工事に長年携わってきたノウハウを個人顧客向けの事業にも取り入れながら、クオリティの高い空間づくりができるのは、私たちの強みです。建築基準法に沿いつつそれを上回る独自の施工基準に則って工事をしているため、保証期間内には、たとえばモルタルのシミやひび割れといったような施工不良はほとんど発生していません。
受注拡大を受け、営工分離体制への移行を目指しANDPADを導入
展示場に来場したお客様に対しては、新人社員とベテラン社員の2名が最初のヒアリングを行う。その後、ヒアリングした内容を営業担当に引き継ぎ、営業担当が現地調査・初回プレゼンから現場管理まで一貫して行う体制をとっている。
川崎さん: 案件によって得意・不得意はなるべく作りたくないので、幅広い案件を経験できるように担当者の割り振りをしています。入社1年以内の社員には、現場調査への同行や見積もりのチェックなど、随時サポートに入りながら独り立ちを目指してもらっています。問題が起きた時にスピーディに対応するためにも、大型物件や難易度の高い物件は、私やベテラン社員が担当しています。
同社は現在、大小合わせて年間300〜400件の工事に対応している。展示場への来店数、受注量が増加の一途を辿るなか、営業担当者の負担が増大していることが課題となっていた。
そうした状況に対応するため、営工一貫体制から営工分離体制へ移行すべく、現場管理責任者の育成にも取り組んでいる。同社の現場管理を担う人材として入社したのが、日野原さんだ。
日野原さん: 私は現場管理補佐として、現場を回すことを第一に業務に取り組んでいます。工程会議で月の案件数を把握した上で、営業担当者と連携しながら、協力会社や資材を手配し、現場管理を行っています。前職では、土木系の建設コンサルタントで公共工事関連の書類作成などに携わっていたため、個人向けの事業も、現場管理も未経験で入社しています。入社2年目になりますが、まだまだ勉強中です。
株式会社広田造園 シンフォニック・ガーデン 現場管理補佐 日野原 遼氏
村上さん: 本来は、営業と現場管理を分業化するのが理想です。営業担当者が提案に専念できれば新規のご依頼にも多く対応できますし、現場管理担当者が専任で現場を見ることで工事品質もより高めることができる。しかし、未経験で入社した社員が現場管理の責任者へと成長するまでには3年はかかります。どうしても育成に時間がかかるため、今は営業担当者に現場管理も任せる状況が続いています。案件の増加によって、営業のキャパシティにも限界が来ており、このままでは”クレームゼロ”を貫いてきたクオリティを維持し続けるのが難しいと感じました。
また、現場間の移動距離の長さも営業担当者の負担になっていました。当社は、基本的に展示場から車で20〜30分程度を商圏としているのですが、まれに福山市や尾道市といった片道2時間程度かかるエリアや県外の現場にも携わります。現場確認の移動を減らすためにも、「現場の状況を遠隔で確認できるツールがあれば」という思いが強くなっていきました。
スマートフォンのメッセンジャーアプリでの煩雑なやり取りから脱却したいという思いも、ANDPAD導入の決め手になりましたね。社内の連絡事項をはじめ、ひっきりなしに通知が来ていて、内容を追い続けるのが大変でした。職人さんとも個々にトークルームを立ち上げてやり取りしていましたが、複数の現場が同時進行している場合、どの現場の写真や情報なのかが一目では分からずストレスを感じていました。
時代の流れ、顧客ニーズの変化に合わせて、新しいチャレンジを続けている同社。シンフォニック・ガーデン事業の拡大に合わせて社員数も増加し、人材育成も進めている。事業拡大の過程で営業担当者の負担が増えたことにより、「現場の見える化」が必要となった同社では2020年にANDPADを導入した。後編では、実際のANDPA活用方法や、導入後の変化について深堀りしていく。
URL | https://symphonic-garden.biz/ |
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代表者 | 代表取締役 廣田 昭 |
創業 | 1949年 |
本社 | 〒733-0815 広島県広島市西区己斐上1-14-3 |