〜後編〜ビルダーが取り組む、デジタルを活用した監督2.0への道 / “脱現場”を断行し、一人当たりの業務生産性を改善!

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石井唯光氏
リストコンストラクション株式会社 常務取締役。住宅資材商社に入社し、5年間経理として従事。その後、友人が経営するレジャーサービス業に転職し、店長として6年間顧客管理、従業員管理など全ての業務を経験する。共通の友人の紹介がきっかけで代表取締役の北見氏と出会い、2000年リスト株式会社に中途入社。本社の財務経理を担当し、2019年より現職。

小林剛氏
リストコンストラクション株式会社 建設事業部 課長。店舗の現場監督を1年間経験した後、2001年、リスト株式会社に中途入社。戸建ての現場監督に従事する。2008年、当時購買部がなく監督によって収益性にばらつきがあったことを問題提起したことで積算課が立ち上げられ、そのメンバーに抜擢。2017年より現職。

砂川郁夫氏
リストホームズ株式会社 営業部 部長。不動産賃貸の仲介業を12年間、デベロッパーを3年間経験した後、地元である神奈川県大和市で事業用不動産売買のコンサルティング会社を経営。49歳の時に転職を決意し、代表取締役・菅野氏との出会いをきっかけに2018年2月に同社へ中途入社。現在に至る。



不動産仲介・流通事業からはじまり、「人に感動を、時代と世代を超える価値を。」というメッセージのもと、国内外に幅広く事業領域を拡大してきたリストグループ。不動産取引全般に精通し、さまざまな不動産の需要にワンストップで対応する「スペシャリスト」として、あらゆるニーズに応え続けている。2016年にホールディングス経営に移行したことで製版分離体制となり、営業・設計部門はリストホームズ株式会社、建設部門はリストコンストラクション株式会社と分社化。これにより収益構造が明確化し、建設部門の人件費、販管費の膨張した状態が浮き彫りになり、生産性改善を会社として取り組むことに。そして、同社はANDPADを活用した運用ルールの徹底により生産性を向上させ、販管費削減を実現した。今回は取組みの中核を担う3名にインタビューを実施。後編では、監督業務をデジタル化したことによる課題とそれに対する打ち手、今後の展望について紹介する。

※令和4年1月1日をもってリストコンストラクション株式会社はグループ会社であるリストホームズ株式会社と合併し、リストホームズ株式会社となりました。

EX(従業員体験)の向上〜週一回の現場訪問を勉強の場に〜

監督業務を細分化し、デジタルを活用して職人とコミュニケーションを図ることで現場に行かずにオペレーティブな業務が遂行できるようになった同社だが、「現場に行かない」ことによるジレンマも生じた。
経験の浅いディレクターでも、ある程度慣れてくれば工程管理を回すこと自体は長けてくるが、現場に行かずに図面しか見ないことによって図面の重要性が薄れ、建築知識が積み上がっていかないという課題に直面。また、ANDPADの工程表があればオペレーティブに業界未経験者でも業務を行えることが仕事のやりがいを見失う要因となり、「自分の仕事は何のためにあるのか?」とモチベーションの低下を招いていた。

小林氏: 現状は、職人からチャットで問い合わせがあっても専門知識がないため設計に確認を取ったりしていますが、その分時間のロスになっています。今まで現場訪問ゼロを掲げてやってきましたが、実際に現場と図面を突き合わせて知識を蓄積していかないと結果的に効率が上がらないということが分かったので、最近は月1〜2回程度現場で勉強会を実施するようになりました。すると、業界未経験だったディレクターからは「図面とイメージが繋がった!」という声も。私も現場監督を経験しているので、本来現場には行くべきだと思っていますし、現場でのコミュニケーションも大事だとは思っていますが、「何のために現場に行くのか」という目的が非常に重要。

今後も現場に行かない基本方針は変わりませんが、勉強のために週1回現場に行って、図面との整合性を確認するというのが理想ですね。デジタルによって業務効率を上げた次のステップとして、こうしたEX(従業員体験)を追求していきたい。自分が手掛けた家が形になる喜びを与えていかなければいけないと感じています。

また、ANDPADの運用を浸透させるフェーズでは、便利なツールであると実感して現場で使っていただけるように、土日であっても職人からチャットに連絡があれば返すようにしていましたが、運用自体が定着した段階になると、いつでも拘束されてしまい監督が疲弊してしまう。ANDPADは良い面もありますが、その点は配慮が必要だと思い、現在では現場監督の休日は電話とチャットを禁止にしています。段階を踏んで運用ルールを変更したことで、現場からの反発もなく、協力してもらえる環境を整えることができました。

リストコンストラクション株式会社 建設事業部 課長 小林剛氏

デジタルツールを活用した業務効率化によって会社としての健全性を回復させ、従業員が見失ってしまったモチベーションにもしっかりと向き合い、効率化のためではなく勉強のために現場に行くという、現場の定義を変えた同社。

また、段階的に運用ルールを変更していった点は、小林氏の長年の現場経験による肌感覚があった上での計算し尽くされた丁寧な対応があってこそ、スムーズな移行が実現できたのであろう。

今後の展望について

分社化後、経営改善のために同社が取り組んできたのは、現場に行かずにANDPADのチャットでコミュニケーションを図るという、実にシンプルなこと。しかし、カットすべきボリュームが非常に大きく、かつ従来のやり方に慣れている現場の意識を変え、協力体制を構築するまでには、シンプルがゆえに会社として強い意志で断行する必要があった。退職者が続出するなど大きなリスクを背負うことにもなったが、怯むことなく愚直にやり抜いた結果、現場でのデジタルの活用が浸透し、順調に経営改善されている。同社はこれからどのような改善目標を見据えているのだろうか。

小林氏: 将来的にはANDPADにツールを一本化していきたい。例えば、ANDPAD上で業者の見積もりを連携できたり、注文書を発行できるのがベストなので、当社の基幹システムとの連携を踏まえて、ANDPAD[受発注]の導入も検討しています。
今後ストック資産のLTV(顧客生涯価値)を最大化させていくために、いずれは自社のストックへのリフォーム、メンテナンスの内製受注をしていきたいと考えているものの、現状は社内で対応できるリソースがないため、当面は取次外注で進めていきます。ただ、外注リフォームの場合でも、物件情報が自社のANDPADの環境にストックされていて、案件が発生したらANDPADに業者を招待するだけなので、とても便利ですね。

石井氏: さらなるコストマネジメントを推進していくためには、ボリュームメリットが必要な局面になってきたと考えています。現状の年間棟数である200棟では業者や商社との値段交渉ができないので、年間300棟を実現できる生産体制構築のための採用を強化していくつもりです。

リストコンストラクション株式会社 常務取締役 石井唯光氏

赤字が膨れ上がっていた状況下で建設事業に一本化し、販管費を削減するためにANDPADを活用した現場管理によって生産性を向上させ、この選択と集中によってV字回復を遂げた同社。まさに、DXによる経営改善の好事例だ。そして、同社は業務改善によって経営課題をクリアしたことで、新たな課題設定として更なるコストマネジメントを図るために、年間棟数を1.5倍にすべく生産体制構築に動き出している。基幹システムとの連携などよりデジタルを駆使して生産性を向上させて建設事業を拡大させていくだけでなく、将来的にはリフォームやメンテナンスなどの事業へと広げていきたい考えだ。DXによって好循環が生まれた同社の今後の動向に、業界内の注目が集まるだろう。

リストコンストラクション株式会社
https://list-c.co.jp
〒231-0015
神奈川県横浜市中区尾上町4-47 リスト関内ビル
代表取締役:北見尚之、菅野浩
設立:1995年4月18日

リストホームズ株式会社
https://listhomes.jp/
〒231-0015
神奈川県横浜市中区尾上町4-47 リスト関内ビル
代表取締役:菅野 浩
設立:2017年4月12日

取材・編集:平賀豊麻
ライター:金井さとこ
デザイン:佐藤茜