社員と取引先から選ばれるために。足場工事業者が取り組む業務改善 / 〜前編〜家づくりを影で支える足場屋の「誇り」と「苦悩」

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深川 完氏
株式会社セオテクノ東京西 代表取締役
22歳の時に株式会社セオテクノに入社。椎間板ヘルニアを患い現場作業ができなくなり退社。プラント施工事業を担う建設会社に入社し、原子力発電などの仮設工事に携わる。30歳の時にセオテクノに再就職し、営業として活躍。32歳の時にセオテクノ初のFCとして株式会社セオテクノ東京西が設立され、代表取締役となる。



1998年に創業し、首都圏近郊の戸建て住宅専門の「足場屋」として、安全を第一に、作業環境に配慮しつつ、素早く効果的な施工を可能にする、確かな技術を提供し続けている株式会社セオテクノ。「拠点を増やして、首都圏を環状に結ぶ“国道16号を網羅する”」という目標を掲げ、2010年に東京都・西多摩エリアでFC第一号として設立されたのが株式会社セオテクノ東京西だ。同社は、従来アナログだった案件管理の効率化を図るために、2021年11月にANDPADボードを導入した。そこで今回は、同社の代表取締役 深川 完さんに業務改善のための現場DXの取り組みについて伺った。前編では、深川さんの歩みと同社設立までのストーリー、同社の組織体制、現場DXの取組みをスタートさせた背景について紹介する。

“国道16号を網羅する”ために、FCとして独立

首都圏近郊の戸建て住宅を専門とする足場業者である株式会社セオテクノ。「首都圏を環状に結ぶ“国道16号を網羅する”」という目標を掲げ、現在は3つの拠点でFC展開を行っている。そのなかのひとつが東京・西多摩エリアを拠点とする株式会社セオテクノ東京西だ。

代表取締役の深川さんは、22歳の時に幼馴染に紹介してもらい、理想の父親像に近い情熱溢れる高橋社長に惚れ込みセオテクノに入社した。しかし、腰を痛めてしまい、退職の道を選んだ。別の会社で原子力発電などの仮設工事に携わりキャリアを積み重ねるも、海外転勤の話を断ったことを機に居づらくなり退職。30歳の時にセオテクノに営業として戻ることになった。

深川さん: セオテクノに戻ってきたのは、人生のターニングポイントだったと思います。セオテクノに戻り、営業として大手のハウスメーカーさんを担当していたのですが、受注案件が多く仕事が捌ききれず、完全にキャパオーバーでした。社内職人が足りないので協力会社さんに振るしかない状態でした。安全面などをチェックして職人さんを管理していかなければいけない立場でしたが、新規取引の職人さんは意思疎通が難しくミスも増えてしまい、現場フォローも必要になります。結局外注費や販管費がかさんで利益を圧迫し、協力会社さんに仕事を振っても利益にならないような状態でした。新規で受注しても稼働できる職人さんがいないので、自分で足場を組むしかない現場もありました。本来営業としてフォローしなければならない現場に手が回らなくなり中途半端な仕事になってしまって継続的な受注に繋がらず、ストレスが溜まる状態でしたね。

株式会社セオテクノ東京西 代表取締役 深川 完氏

こうした葛藤を続けていた時に、高橋社長は深川さんにFC第一号としての独立を打診した。深川さん自身は元々独立するつもりはなかったが、高橋社長の思い描く「首都圏を環状に結ぶ“国道16号を網羅する”」という夢を実現させるために、32歳の時に同社を設立した。

「上司と部下という上下関係ではなく、仕事を共にする仲間としての信頼関係を大事にしている」という深川さんの言葉には、「働き手が信頼し合いながら働く環境を作りたい」「今まで自身が苦労してきたことを社員に経験させたくない」という意志が込められている。社員が気を遣わないようにと、深川さんがなるべく事務所を不在にして遠隔でコミュニケーションを取るなど、働き手がお互い信頼し合いながら働ける組織づくりを目指している。

深川さん: 自分が社長という感覚は未だにないですね。「社長」と呼ばれるのが苦手なので、社員には下の名前で呼んでもらっています。職人時代や前職の会社などで自分が受けてきた教育は精神的に辛いものもあったので、若手にはそういう経験をさせたくない。今までに安全に対する意識を強く持つに至った経験を若手にどのように伝えていくかについては、試行錯誤しながらやっています。

コロナ禍で人材流出が加速、外国人技能実習生の受け入れを強化

設立当初は20〜30名体制の組織だった同社だが、個人請で出来高制を取っていたことから、安定志向の強まりと共に他社への人材流出が目立つようになった。比較的原価がかからず参入障壁が低い業界特性のため引き抜きも多く、5年前から固定給にシフトしたもののコロナ禍で一気に人材流出が加速した。

深川さん: いろいろな足場会社の社長さんとの付き合いも大事な一方で、引き抜きも頻繁にあるのでなかなか難しい業界でもあります。足場の仕事は、寸法が決まっているから簡単だろうと思われるかもしれませんが、足場の規格に合わせて組んでいくには経験値と技術が必要です。組むだけでなく足場を使う作業者の安全や優先順位、作業のしやすさなどを考えながら、皆さんの見えない安全を守らなければいけません。建物に合わせて足場を組みますが、ひとつとして同じ建物はないのがこの仕事の難しいところでもあります。現調と図面から組むべき足場を考え、きちんと収めるまでの経験を積むのには時間がかかり、一人前になるまで最低1年は必要です。大体の人が体力的にきつくて1週間くらいでやめてしまうことが多いですね。だからこそ、足場屋を「きつい・汚い・カッコ悪い」ではなく、カッコ良い仕事にしていきたいんです。

現在、同社は社員4名とベトナム人の技能実習生6名の10名で構成されており、2名の職長がそれぞれチームを持ち、2班体制になっている。副業として同社に入社した事務スタッフは、週2〜3日出社して同社の業務を効率的に行いながら、空いた時間で事務所にいながら本業の仕事もこなすなど、人材確保が難しい業界だからこそ多様な働き方ができる環境を整えている。

足場の仕事は体力的にきついことから業界全体的に日本人の雇用が難しく、特に都内では人材確保がかなり厳しいのが現状だ。そこで、同社は海外に目を向けて外国人技能実習生の受け入れに注力し、多くのベトナム人の技能実習生を採用している。

また、同社は協力雇用主として保護観察処分となった方の受け入れも行っている。継続が難しいケースが多いものの、再チャレンジの支援にも精力的に取り組んでいる。

深川さん: 5〜10年前は、正直、外国人技能実習生のことを必要不可欠な人工として見ていた部分もありました。しかしながら、技能実習生側も一昔前と違い、送り出し元の国の経済発展も進んできましたし、SNSを通じて受入企業について情報交換が盛んになっています。これまでよりも技能実習生の働きがいや働きやすさに気を配らないと、日本人だけではなく技能実習生も来ていただけなくなりますからね。ありがたいことに、今働いてくれている技能実習生はみんな凄く良い子たちです。これからもきちんと一人ひとりの「人」として対峙したいと思っています。一従業員として気持ちよく働いてもらえるように努めています。

従来の運用面における課題とANDPADボード導入の経緯

従来の同社の業務フローは、営業である深川さんが案件を受注すると、まず事務スタッフが業務ごとに色分けされたカードに案件名や日付、所在地などをカードに記入。それを職長がホワイトボードに貼って職人を割り当てる、という流れで案件を管理していた。このやり方では事務スタッフが案件カードを手書きで作成する工数がかかるだけでなく、事務スタッフへの案件の共有漏れやカードへの記入漏れ、所在地などの記入ミスなどが発生していたという。

職人の割り当てを行う際には、足場組みの予定は日程が決まるものの、取り外し作業は天候によって日程がズレ込んだり、元請会社との支払い調整なども考慮する必要がある。そのため、どう予定を組むべきか常に職長の頭を悩ませていた。現場の職人にとっては、ホワイトボード上での案件管理は事務所でないと確認できないことが多く、予定確認のための無駄な工数がかかる状態に。職長は休みの職人に翌日担当してもらう現場情報を伝えるために、電話でホワイトボードを見ながら情報共有をしており、業務工数を減らす方法を模索していた。

また、ホワイトボードでの管理と併せて、主に深川さんが出先でも確認できるようGoogleカレンダーに転記して二重管理していたが、転記漏れなどが発生してしまいミスやトラブルの要因にもなっていた。

深川さん: お客様から案件の連絡が入ると、職長と電話しながらどの日に入れられそうか相談します。以前は事務所のホワイトボードを事務スタッフに撮影してもらい、それを見ながら話して、隙間があればお客様に「入れます」と伝えて受注していました。事務スタッフにホワイトボードの写真を撮ってもらう手間をかけてしまっていましたし、5〜10分で状況が変わってしまうことも多々あるので、事務スタッフに確認している間に他社に決まってしまうことも。ホワイトボードでの管理は、ホワイトボードの面積という物理的な制約から半月分しか記入できなかったので、半月以上先の予定が分からず受注を逃してしまうこともありました。

深川さん: こうした課題を解決するためにはスマートフォンで一元管理したほうがいいのではないかと、事務スタッフがデジタルツールの導入を検討していました。税理士に相談しところ、IT補助金を申請できるという話を聞いて、システムを導入するにあたっていろいろ調べてくれました。その時にANDPADを見つけて、「ANDPADを導入して補助金の申請をするのはどうですか?」と提案してくれました。今まで慣れていた運用から変えるのはチャレンジではありましたが、信頼しているスタッフからの提案でしたし、アナログでやっていたことによる課題をデジタルで解決できると思い、ANDPAD導入を決意しました。

こうして、同社は2021年11月からANDPADボードでの運用を開始。現場DXに取り組み、業務改善を図った。

後編では、ANDPADボードの運用を浸透させるまでの取り組みや運用面の工夫、導入後の業務変化、今後の課題と展望について紹介する。

株式会社セオテクノ東京西
http://www.seotecno.co.jp
〒190-1201
東京都西多摩郡瑞穂町二本木445-1
代表取締役:深川 完
設立:1998年

取材・編集:平賀豊麻
編集・デザイン:原澤香織
ライター:金井さとこ
デザイン:森山人美、安里和幸