「次の誰かのために」という理念を掲げ、建設・不動産・金融を掛け合わせた地域再創事業を展開する株式会社SOUSHINホールディングス。Vol.2では、現場と職人を裏から支える「株式会社SBO」のバックオフィス変革とDXの取り組みを紹介した。
今回のVol.3では、同社が推進する「グループシナジー」の真価と、未来に向けた壮大な構想に迫る。
子会社設立やM&Aを通じた技術継承、本社周辺を面で再創する「SOUSHIN village」構想、そして業界の未来を見据えた「売上高1兆円」への挑戦。どれほど組織が大きくなっても「人」を中心に据え続ける同社の経営哲学と、建設業界の未来を切り拓く挑戦の全貌を紐解く。
職人の技術を未来に繋ぐエコシステム。成長を支えるグループシナジーと経営戦略
事業の多角化を進めるSOUSHINホールディングスは、子会社の設立やM&Aを積極的に行い、グループ全体で建設からまちづくりまでを一気通貫で対応できる体制を構築している。その根底にあるのは、常に「人」を中心軸に据える経営姿勢だ。その一例として、2023年に設立された電気設備設計・施工を行う「株式会社創電社」は、社員の熱意から生まれた内部創業である。
妹尾さん: 「当社に入りたい」と言ってくださった電気工事士の方がいて、当初は社内に電気部を作ろうとも考えました。しかし、ご本人の年齢やキャリアのタイミングを考えた時に、経営者として責任と裁量を持った挑戦の場を設けたほうがいいのではないかと考え、「それなら一つの会社として立ち上げませんか」と提案し、私が創電社の設立をサポートしました。
社内人材の挑戦機会を創出しつつ、グループ内の新築・改修工事における電気設備施工の内製化を実現しています。メンテナンス対応や特殊照明デザインなど、独自の強みを獲得することにも繋がっています。

株式会社SOUSHINホールディングス 専務取締役 妹尾聡さん
2026年にグループへ参画した宮城県の「株式会社スリーエイトエンジニアリング」とのM&Aも、単なるスケールメリットを追ったものではない。同社は何十年も手すりや外部階段などの金属加工・溶接を手掛けてきたが、社長の高齢化やゼネコンからの厳しい価格要求により、会社を畳もうとしていたのだという。
妹尾さん: 当社の案件で金属工事をお願いしたくて連絡を取ったところ、「会社を畳むつもりです」と言われました。しかし、スリーエイトエンジニアリングが持つ技術は本当に素晴らしく、よくよく話を聞くと「本当は畳みたくないが、見積もりを出しても叩かれてしまい、案件が決まらないことも多く苦しい」と。建設業界全体で溶接工が減っている中、この卓越した技術を絶やしてはならないと強く思いました。当社の「次の誰かのために」という理念にも合致していたため、グループに入っていただくことで手を組むことにしたのです。
SOUSHINホールディングスとしては外注していた金属工事の内製化と東北エリアへの拠点進出が叶い、スリーエイトエンジニアリング側には安定した受注とSBOによるバックオフィス支援が提供される。熟練の技術と人を未来に繋ぐ、双方にとってプラスの相乗効果が生まれている。
これにより、現在同社は「創伸建設(総合建設)」、「創電社(電気設備)」、「再創(不動産)」、「SBO(バックオフィス・金融・企画)」、「スリーエイトエンジニアリング(金属工事)」の5社体制となった。企画・設計・金融という川上から、施工、さらにはアフターフォローやメンテナンスという川下までを一気通貫で網羅するエコシステムを確立しているのだ。

強力なグループ連携が機能した結果、同社は2020年の第二創業時の売上4.6億円から、わずか5年で約7倍となる売上30億円超へと急成長を遂げた。従来の請負型ゼネコンから、総合的なまちづくり会社へと躍進した背景にはどのような経営戦略があったのだろうか。
妹尾さん: 最初から綿密な計画があったわけではありません。建設業は案件ごとの請負が中心であり、ストックビジネスではないため、「単発の請負工事だけに頼っていてはこの先厳しい」という強い危機感がありました。最初は高品質な施工技術というハード面で勝負しようとしましたが、ハードだけではどうしても価格競争に陥りやすく、限界を感じていました。そこで、公民連携やコミュニティデザインといった「ソフト面」への事業の多角化に舵を切ったのです。当社の想いやビジョンに共感してくれる意欲的な人材が集まってくれたことも、事業を成長させる大きな推進力になりました。
起業家理論に「エフェクチュエーション(※)」という考え方がありますが、私たちはまさに、自分たちが持っている手段である「ゼネコン出身者の施工技術」「バックオフィスノウハウ」「『次の誰かのために』という情熱」を起点にスタートし、走りながら失敗と修正を繰り返してきました。
ハードだけの価格競争で勝負することをやめ、早い段階からソフト面でのまちづくりと、それを裏で支える「バックオフィス支援」を融合させてきました。そして何より、「人を大切にする」という軸をぶらさずに挑み続けてきた結果が、他社にはない独自のポジショニングと売上成長に繋がっていると考えています。
(※)エフェクチュエーション
成功を収めてきた起業家に共通する、従来とは異なる思考プロセスや行動のパターンを体系化した意思決定理論のこと。未来は予測不能であるという前提のもと、所与の資源や手段を用いて、結果を創り出していくことに重きを置いたアプローチ。(参考:https://mba.globis.ac.jp/about_mba/glossary/detail-20914.html)

自らのまちを再創する「SOUSHIN village」構想とインフラ整備
独自のポジショニングを築き上げてきた同社が現在掲げている目標は、2030年に「売上高100億円」の達成だ。創伸建設で60〜70億円、創電社で10億円、そして再創とSBOで残りを牽引し、さらに2050年までには「売上高1兆円」という壮大な目標を見据えている。
なぜ、そこまでの規模を追求するのか。そこには、過疎化や人手不足といった地域社会・建設業界の深い課題を解決し「まちを変え、真の社会的インパクトをもたらすには、組織規模と経済力が不可欠である」という考えがある。
そのインパクトを生み出す第一歩として、現在同社が本腰を入れているのが、自らの足元である本社周辺エリアを再創する「SOUSHIN village」計画だ。
妹尾さん: 創伸建設の本社がある札幌市内の住宅街は、かつて代表の岡田が小学生時代に遊んでいた思い出の地域です。当時は賑やかなベッドタウンでしたが、現在は深刻な高齢化と人口減少が進み、夜も暗く空き家が目立つエリアへ変わってしまいました。そこで、点在する空き家や土地を自社資金で買い取り、社宅やオフィス、地域交流拠点などへ順次リノベーションすることで、エリア全体の資産価値を向上させ、地域コミュニティを活性化しようと考えています。
実際に、SBOの自社オフィスも本社近隣の空き家を買い取り、リノベーションして活用しています。空き家になって放置される手前の段階で買い取りを提案したところ、長年その家にこだわりを持って住んでいた元住人のご夫婦に「大切に使ってくれるなら」と非常に喜んでいただけました。

空き家を買い取り、自社でリノベーションしたSBOのオフィス。
さらに同社は、建物の整備にとどまらず、地域住民と社員のための「インフラ」まで自前で整える計画を進めている。
妹尾さん: 一つは「交通インフラ」です。本社エリアは地下鉄駅から離れており既存の路線バスも少ないため、自前でデマンドバスを走らせたいと考えています。現在は、札幌の官民連携組織である「SUP(札幌アップデート)」にこの構想を取り上げてもらい、既存のバス会社との競合を避けながら、AIを活用した最適なルート編成で乗り合いバスを運行できないか、議論を重ねているところです。
そしてもう一つが、「子育てインフラ」です。2026年に当社は札幌市清田区にあるキッズパークカフェ「WA-WA-‘S(ワーワーズ)」を事業承継しました。もともと本社エリアに保育園を作りたいと考えていたのですが、新規での認可保育園の設立はハードルが高く悩んでいました。そんな時に「WA-WA-‘S」が事業を畳んで売却するという話が入り、私たちが承継すれば地域の子供たちや子育て世代の社員のためになると考えました。
これを足がかりに、ゆくゆくは建設現場の事務所に託児スペースを作りたいと考えています。現場に出たいという想いで入社した女性技術者が、出産後に現場へ戻れず内勤にならざるを得ない、あるいは辞めてしまうという業界の課題があります。現場に子供を預けられる場所があれば、働き方の選択肢が広がり、彼女たちが現場に戻る後押しになるのではと考えています。

自分たちの身近なまちの課題から逃げず、建設の力で一つひとつ解決していく。ホールディングス化によって高い施工品質を追求する「真の建設会社」としての基盤を固めながら、次世代に新しい景色を見せる「まちづくり会社」へと歩みを進めている。
妹尾さん: 私たちはまず、まちづくりの会社として、自分たちのまちから取り組みを始めたいと考えています。そして日本国内だけでなく、海外の事例なども学びながら民間同士のコミュニティを広げていきたい。「まちを育むならSOUSHIN」「自分たちのまちをどうにかしたいと相談するならSOUSHIN」と言われるような、地域と人に不可欠な存在になっていきたいですね。

自分たちの足元である本社周辺の再生からスタートし、自分たちの手でまちを良くしていく同社の姿は、地域課題に直面する全国の建設会社にとっても大きな道標となるはずだ。
どれほど事業規模が拡大し、高度な仕組みやグループ体制が構築されようとも、同社の中心軸にあるのは常に「現場で汗を流す職人・技術者・社員」という「人」である。まちづくりの本質もまた、そこに集う人々のコミュニティと想いを繋ぐことにある。
人手不足や後継者不在による黒字廃業など、地域の建設業が抱える構造的な課題は、もはや一社単独の力だけで解決できるものではない。だからこそSOUSHINホールディングスは、自社で確立したスキームを囲い込むことなく、地域の協力会社や専門工事業者へ惜しみなく展開していく構想を描いている。
「次の誰かのために」。その情熱と挑戦は、自社のためだけでなく、地域と建設業界全体の持続可能な未来を力強く照らし続けている。
| URL | https://k-soushinhd.co.jp/ |
|---|---|
| 代表者 | 代表取締役 岡田 吉伸 |
| 設立 | 2025年 |
| 本社 | 北海道札幌市豊平区月寒東4条18丁目2番6号 |















